Facturaとは「インボイス」のことである。売買の証明書のことだ。日本の領収書のようなものだがメキシコではとても重要である。
メキシコは税務・財務申告がすべて電子化されている。ファクトゥーラも、今は紙印刷のものなど通用しない。すべてPDF/XMLファイルでのやり取りなのだ。スペインのシステムを導入したとかで、商売をするにはこれを発行するシステムが不可欠になる。
メキシコにはIVAと呼ばれる日本の消費税にあたる間接税が導入されており、当然ファクトゥーラにはこの徴収が明記・上乗せされている。
メキシコは習慣・伝統的に脱税が横行していたこと・マフィアのマネーロンダリングの温床となっていたことなどが大きな理由で、このようなシステムが導入されているのだ。逆に言えば、これを発行しない商売というのは、IVAやISR(所得税、会社の場合は法人税)を払わない、払いたくない闇商売ということである。露天商や屋台などが多い。
売買の証明書はこれだけである。クレジットカードの決済とか、レストランの領収書とかはすべてただの「記録」であり、税務申告には通用しない。これらは「払ったんだね」という証明でしかなく、日常生活には当然必要であるが、税務上の意味はまったくない。
「意味はない」というのがどういうことかというと、まず、企業がこれらの費用を控除扱いにしようとすると、これ(ファクトゥーラ)が必要になるのである。なければ損金外扱いだ。経理をちょっとかじったひとなら「損金外扱い」というのが何を意味するか、ご存知だろう。
端的にいえば法人税の支払いが増えるのである。それでなくてもメキシコは法人税が高いので、ファクトゥーラがないというだけで支払いがふえるのは馬鹿らしい事だ。
どうやってファクトゥーラを入手するか。一昔前は、支払いをする際にお店・サービスに「要求」していた。レストランなんかは支払いよりもファクトゥーラの発行の方が時間がかかり、日本人的にはイライラさせられたものである。ひどかったのはガソリンスタンド。いちいち彼らの事務所に出向いて申請して入手してたのだ(今でもそういうところはある)。ガソリン給油10分、ファクトゥーラ申請で並ばされて20分とかザラだった。なんでそうまでしてたかと言うと、ウチの会社の場合、ファクトゥーラがないと経費が下りず、自腹になるからである。地方に出張した際は、ファクトゥーラが発行できるレストランを探してウロウロしたものだ。ましてや、駐車場などはファクトゥーラの入手がほぼ不可能だったりしたものである。
因みに、紙でファクトゥーラを入手すると、そこには当然売買の番号、QRコードまで印刷されている。会社の経理はこれを使用して財務処理を「電子的」に行う。紙はあくまで情報源でしかない。ファクトゥーラ発行には電子メールが不可欠であり、発行と同時にメールでも配信されるので、これらを経理に転送して経費申請を済ます会社もある。
現在は、自社のウェブサイトのアクセスさせて、売買コードなどを入力させてファクトゥーラをダウンロードさせるのが一般的である。便利になったものだとつくづく感じる。スモールビジネスでは精算時に会社のデータを預かって、後にメール配信するところもある。昔はなかなか送ってこず、その催促電話に疲れ果てた事もあったが。
想像していただければおわかりかと思うが、壮絶に面倒くさい作業なのだ。出張が多い人は、アシスタントにまかせていることも多い。
ここまでは経費の話だけで、なんのことはないと思うかもしれないが、当然電子化されている以上、企業の監査に利用されているのである。
このビッグデータをメキシコ政府はAIを使って調査し、怪しいところに監査をかけてくるのだ。
つまり、監査請求があった時点で、もはや証拠を掴んでいることが多いのである。「なんかありそうだから、書類提出して」ではない。いや、入り口はそう言ってくるが、もうなにかおかしなことがあると思ったほうがいいのである。
監査に関しては、また別のブログ記事にしようと考えているが、とくに企業経営に関しては「メキシコはラテンの発展途上国だからユルイ」と考えているととんでもない目にあうことは確実である。